アキレス腱断裂は手術をしなくても治りますか?
先月アキレス腱を断裂された患者さんがお二人来院されました。
お二人とも「アキレス腱断裂って手術しなくても治るのですか?」と同じ質問をされました。もちろん、アキレス腱断裂は(完全断裂、部分断裂に関わらず)手術をしなくても治ります。しかし、一般の方の多くがアキレス腱断裂は手術をしなくては治らないと認識しておられるのではないかと改めて感じました。
そこでアキレス腱断裂の手術をしないで治す方法(「保存療法」と呼びます)を紹介したいと思います。
アキレス腱断裂をして手術しない場合どのような治療をするのか?
STEP1.先ずはギプス固定です
STEP1.先ずはギプス固定です
怪我した直後からギプス固定をして、松葉杖で生活していただきます。
重症例では太腿(ふともも)から足先までギプスで覆い固定します。
「そんなことしたら膝が曲がらないで、トイレはどうするの?」と多くの方は心配されますが、ご安心下さい。ちゃんと膝は曲げられるように工夫します。太腿(ふともも)の後ろ側はギプスを切ってしまい前側だけ残します。こうすることにより膝は伸ばせませんが、曲げることはでき、トイレなどの日常の生活も多少楽に過ごせます。
比較的軽症であれば太腿(ふともも)はギプスで覆わずに膝下から足先まで固定します。
固定は足先が前に垂れた状態(下垂位という)でしますが、人は足首を直角以上にあげないと歩けません。この下垂位では普通に歩くことはできませんので、この固定期間中は松葉杖を使用してもらい、怪我した側の足は突いて歩くことはできません。
固定する期間は症状によって異なりますが、概ね3週間前後です。
※参考
私たち柔道整復師がアキレス腱断裂の治療に当たる際にはギプスを巻く前に、切れ腱の断端を向かい合わせる「整復」を行います。
STEP2.踵を高くした状態でギプス固定を続けます
STEP2.踵を高くした状態でギプス固定を続けます
ギプス固定の踵(かかと)部分にヒ-ルつけて踵を高くして、つま先立ちで歩いてもらいます。
ただし、いきなり杖なしで歩くことはしません。松葉杖を使って少しずつ足に体重をかけて歩いていきます。最初は両手で松葉杖をついて足には10kg程度体重をかけます。その後15kg→20kg→30kgと足にかける体重を増やしていきます。
ここからがアキレス腱断裂の治療で一番難しところで、この時期に体重のかけさせ方を間違えると再断裂してしまいます。超音波エコ-画像などで腱の修復段階を慎重に診ながら、治療を進めなくてなりません。
また、この時期から脚をあげたり、膝を曲げたり足首を動かさないで行う運動は積極的に行っていきます。
STEP3.ギプス固定を外して、松葉杖なしで体重をかけて歩いていきます
STEP3.ギプス固定を外して、松葉杖なしで体重をかけて歩いていきます
怪我してから概ね8週間経った頃から松葉杖を使わずに体重をかけて歩いていきます。
これもいきなりヒールつきギプスを脱いで普通に歩くのではなく、踵の少し高い装具をして足首の角度を微妙に調整していきます。
この間、趾(足指)の運動やつま先立ち運動を積極的にやっていきます。
STEP4.装具なしで普通に歩いていきます
STEP4.装具なしで普通に歩いていきます
装具やテ-ピングなどの固定なしでも普通に歩けるようになれば完治です。
ここまで経過が良好であれば12週間程度です。
アキレス腱断裂を手術しないで治すメリット
1.入院をしなくても済む
1.入院をしなくても済む
仕事が忙しくなかなか休めない方にとっては当然入院を要する手術は敬遠されます。
保存療法で通院しての治療の場合は1日の治療時間は30分~1時間程度で、週2~3回通院していただければ治療できます。どうしても入院できない患者さんには大きなメリットです。
2.患者さんの経済的負担が少ない
2.患者さんの経済的負担が少ない
ちょっと古いデ-タですが、アキレス腱断裂をして整形外科にかかった場合のMRI検査料金は1,400点つまり14,000円程度で3割負担の場合は4,200円掛る計算です。その後、手術するとなるとアキレス腱縫合術は6,700点つまり67,000円で3割負担の場合は約20,000円掛ったそうです。その他に入院費用なども掛かります。
当院でアキレス腱断裂の患者さんの初回施術料は手術費用の1/4~1/6程度です(ギプス固定の範囲によって金額は異なります)。
3.手術痕(あと)が残らない
3.手術痕(あと)が残らない
特に女性は手術痕(あと)を気にされます。保存療法でアキレス腱断裂の治療を行った場合、手術痕(あと)は残りませんので、この点も患者さんにとって大きなメリットです。